久野研究室では,極限環境通信や光ファイバ通信に関する研究テーマを主に取り扱っています.通信環境に応じて最適な通信媒質は異なるため,光波や電波,音響波など様々な手法を扱い,通信システムを検討しています.特に,最近ではAI技術が関連した通信システムに関するトピックが多いです.代表的な研究テーマを紹介します.
極限環境とは,水中や深宇宙のように,通常の通信技術がそのままでは使えない環境のことです.例えば水中では電波がほとんど届かないため,音波(音響通信)や光(可視光通信)を使った通信が必要になります.一方で深宇宙では,非常に長い距離を超えて情報を伝えるために,光を用いた高効率な通信技術が重要になります.久野研究室では,この効率的な通信を行うために極限環境で送受したい情報や実現したいタスクが限られていることに着目し,AIを用いたセマンティック通信を行うことを検討しています.セマンティック通信とは,すべてのデータを正確に送るのではなく,伝えたい意味・意図を重視して情報を伝える新しい通信の考え方です.
水中音響通信システム
水中可視光通信システム
深宇宙通信システム
東京理科大学 丸田研究室
JAMSTEC
オムロンサイニックエックス
トリマティス
公立千歳科学技術大学 吉本研究室
5Gに代表されるモバイル通信システムでは,無線基地局は信号処理を担う機能部とアンテナ部に分離され,その間は光ファイバによって結ばれます.この区間はモバイルフロントホールと呼ばれ,極めて大きい通信容量が要求されます.フロントホールでは,無線信号をそのまま光の搬送波に乗せて伝送するAnalog Radio over Fiber(A-RoF)と呼ばれる方式や,無線信号を一度デジタル信号に変換するDigital Radio over Fiber(D-RoF)と呼ばれる方式など,多種多様な方式が検討されています.久野研究室では,このフロントホールの効率的な構成方法を検討しています.
光回路によるD-RoFシステムの設計
サブテラヘルツ帯を収容するA-RoFシステムの設計
AIによるA-RoFシステムの最適化
大阪大学 丸田研究室
慶應義塾大学 津田研究室
NTT 未来ねっと研究所
三菱電機(2025年度まで)
光アクセス通信システムとは,通信事業者の局舎からユーザ宅までを扱う通信ネットワークシステムです.現在,マス向けにはPassive Optical Network(PON)と呼ばれる光ファイバと光スプリッタを組み合わせたネットワークが用いられています.これにより一本の光ファイバを共有することで低コスト化を図っています.将来的に,PONの大容量化が求められており,国際標準化団体であるITU-Tより,50Gbpsを超える容量を持つVery High Speed PON(VHSP)の標準化が現在進んでいます.久野研究室では,VHSPシステムに関連するシステム設計を行っています.
VHSPへのデジタルコヒーレント技術の適用
デジタル信号処理回路のソフトウェア化技術
慶應義塾大学 津田研究室
NTT アクセスサービスシステム研究所(R7年度まで)
光ファイバ通信システムには,2010年代頃からデジタルコヒーレントと呼ばれる技術が導入されるようになりました.デジタルコヒーレント技術を利用すると,光波の複素包絡線の振幅と位相を間接的に参照できます.つまり,無線通信で用いられてきた直角位相振幅変調(QAM)方式や直交周波数分割多重(OFDM)方式の利用が可能となりました.その中でも,光固有値変調はかなり特殊な方式です.光波の固有値を利用して変調を行うと,変調信号の振幅や位相が大きく変化しても,光ファイバ中の信号歪みの影響を全く受けなくなります.このように一見すると,理想的な変調手法だと感じますが,利用するには様々な課題をクリアする必要があります.久野研究室では,その課題の中でも,どんな固有値を用いればいいかAIを使って最適化問題に取り組んでいます.
AIを用いた固有値配置の最適化
大阪大学 丸田研究室
我々の身の回りに当たり前のように存在するLEDを使って通信を行う仕組みを検討しています.ヒトの目に見えない速さでLEDを点滅させ,その様子をカメラで取得すると変調された信号が浮かび上がってきます.このような通信システムは,光カメラ通信システム(OCC)と呼ばれます.久野研究室では,新たなカメラデバイスやAI技術を用いたOCCシステムの研究を行っています.
AIを用いたOCC信号の復調方式
Event-based Vision Sensor(EVS)を用いたOCC
東京理科大学 丸田研究室
東京農工大学 山井研究室(M2の学生さんの研究指導)